第1543回 ウパニシャッドと克己復礼

じめからとしか言ひやうのない天気。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。

落語とは人間の業を肯定する芸である、と言ったのは立川談志師匠ですが、このような芸能は落語だけしかありません。人間はダメな存在であるけれど、それを努力とか根性とか友情とか愛とか団結とか冒険などなどによって克服していこう、というのが芸能の根底だし、ダメさに伴うフラストレーションを発散させよう、というのがスポーツの世界であるならば、それらを両方ともありのままに受け入れてさらけ出しているのが落語である。

人の失態をありのままに描いて、そうだこれが人間というものなのだ、馬鹿だなハハハと笑うのが落語なのであり、そうだ人間とは阿呆なものなのだ、阿呆なりに生きてゆけばいいのであって、それを無理矢理なんとかしようとか人より抜きん出ようとするからおかしなことになるのだ、というカタルシス効果を生んでいるのでしょう。ダメなものをなんとかしなければ、と焦るのではなく、ダメをまず受け入れた上でできることを探っていくという姿勢。あらゆる場面で必要なことです。

そういえばNHK連続テレビ小説の『ちりとてちん』はあらゆる面で落語づくしのドラマでした。困難を乗り越えていくというドラマのセオリーを覆した傑作でした。「困難を乗り越えていく」と聞くと気負ってしまいますが、「うまくやっていく」のはそれほど難しくなさそうです。

(A面へ)

<今日の一唱>
藤本有紀『ちりとてちん』

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