第1446回 ヴァルプルギスと悔過

冬物の段ボールまたフタを開け。仕舞つた羽織ぶり返す。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。

「やらなければよかった」という後悔は、やらなければ味わうことはないでしょう。やったからこそ「やらない方がよかったのだ」と気づくのであって、やらないうちは「やった方がいいだろうか、やらない方がいいだろうか」と迷っている状態なのですから、やってみてどうなるかもわかっていないわけです。そのままにしておけば、「やっぱりやればよかったのだろうか、思い切ってやってみればよかったのかもしれない」と悔やみ続けることになるでしょう。

一方で、やってしまってから「やるんじゃなかった」と反省することは、ひとつの結論を出している時点でいったん問題はクローズしており、気持ちを切り替えて次に進む材料にもなります。

とすれば、何かを行うかどうか迷った時はやってみる方が徳だと考えるのが妥当だし、それを引き留めるのは難しいのかもしれません。問題はそれをどのように行うか、どうすればよりよい結果につながるのか、やらなければよかったと後悔しないためにどういう道筋をたどるのがベストなのかを、とことん考え抜くことなのでしょう。

そういえば立川談志師匠が失礼な客を途中で追い返して「あの野郎が帰ったあとで、帰るんじゃなかったっていう芸、演ってやるからな」と言った有名なまくらがありますが、果たしてあの客は本当に帰ってしまって高座を観なかったのか。そして本当に「帰るんじゃなかった」と後悔しているのか、それとも何も知ることなく後悔もしていないのか、時どき気になります。

(A面へ)

<今日の一唱>
立川談志『まくらコレクション』

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