第1445回 愛の寓意とフォノセントリズム
春の風保湿クリームがばと塗る。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。
新聞をひらくと便利な言葉が山のように並んでいますね。特に政治欄。いつでもどこでも誰にでも使える紋切型フレーズが実用例と共にぎっしりと詰め込まれていて、これを真似ていればどんなトラブルに遭っても自分の身を守り、自分に落ち度があったとしてもそつなくごまかしすり抜けることができそうです。
自分は悪くないのに怒られた時は「誤解を招く発言があったのであれば謝罪したい」。今後の方針を聞かれたら「きっちりと状況をふまえて対処していく」。たとえ失態を演じたとしても「きわめて遺憾であり責任を痛感している」。もし悪事がばれた時でも「記憶にございません」。難しいことを聞かれたら「仮定の質問には答えられない」。重要な判断を迫られた時は「引き続き注視していく」。厄介な相談を持ち込まれたら「実情をよく踏まえた上で具体的な検討を行う」。魔法のようなマンネリフレーズさえ覚えて使いこなせるようになれば向かうところ敵なしでしょう。
そういえば高橋源一郎先生は「ぼくたちをバカだと思っている政治家は信用しちゃいかん」と書かれていますね。今の政治家の言葉を読み聞きしていると、ぼくたちをバカだと思っているのと同時に、自らがバカであることを表明しているように思えます。
<今日の一唱>
高橋源一郎『国民のコトバ』