第1081回 ベイツ型擬態とエアギター
近々長屋でいいことがありますよ。ご覧なさい、酒柱が立った(古典落語『長屋の花見』)。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。
落語の世界では、酒や御馳走を買う金がなくても花見を諦めません。気で気を養うと称して、お茶を酒に見立て、漬物や沢庵をカマボコや卵焼きのつもりで愉しむ。醉った気分になって上機嫌になる。
落語としてはこれを貧乏人の滑稽な浅知恵のように演じていると映るかもしれませんが、そんなことは全くありません。それは、「もしもこうだったらどうなるか」という仮定の世界であり、「あるものを別のものに見立てる」ことであり、「存在しないものを存在するかのように想定する」能力です。決して特殊なものではなく、文化的生活において欠かすことのできないものであり、その完成度を上げようとすればきわめて高度な知的労働を求められるはずです。
目の前にある現物だけしか受け入れられないとしたら、未来を予測することなど一切できず、予測不可能な世の中を生き延びることも叶わないでしょう。
<今日の一唱>
古典落語『長屋の花見』