第403回 レドックスと積荷信仰
おのれ、食ひ裂いてのけうか。引き裂いてのうけうか。あのわ男、誰そ捕らへてくれい。書かすまいぞ書かすまいぞ、書かすまいぞ書かすまいぞ。こんにちは、大島雅己です。
ものをつくり出すというのは時にたいへん難しくて苦しくて辛いことですが、同じぐらい真剣に考えるべきなのは、それを育てることだと思うのです。つくり出したものを育てていくこと。点を線にしていくことといいましょうか。
他人がつくったものを引き受ければいいだけだと多寡をくくっていてはいけません。生みの親より育ての親とも申します。生み出すのも相当に偉大な行為ですが、それを長く長く成長させ続けていくことは並々ならぬ難行です。
IT現場では両者の扱いがかなり違います。生み出すまでは脚光を浴びるのに、育てるフェーズは軽視されがちです。やっつけ仕事のような扱いになったり、ヘタをするとコスト削減の餌食にされます。安定して動いていれば面倒を見る必要はない、と見られてしまうのでしょうか。誰かが面倒を見なくても安定し続けるだろうと思われているのでしょうか。
絵画や書画の作品だって、何もしなければ塗料は劣化して紙は風化してやがて瓦解に向かうでしょう。文芸書も音楽も映画も、作品を保管したり流通させたり広告することで人々の目に触れて生き続けます。落語の演目は代々噺し続ける落語家がいるから引き継がれているのです。ありがたや。
<今日の本歌>
大名狂言『墨塗』