第99回 プルタークと曽呂利新左衛門
おかかえの運転手になんてなりたくないんだ。気の利いたブロガーになんてなりたくないのさ。こんにちは、大島雅己です。
東京五輪の招致の時にオモテナシが流行ったのは懐かしい話ですが、IT現場にもこの言葉はつきものです。
相手の望んでいることを正確に叶えるのは当たり前であり、その一歩先を行くのが本当のサービスなのだ、というような考え方があります。
これ自体には反対ではないのですが、捉え方には注意が必要だと思っています。
以前関わったITシステムで恐ろしい事例がありました。
要件がとにかくオモテナシ偏重になり、少しでもお客さんが使いやすいようにと、「もしこういうケースが起きた時に役に立つ」「こんなことをしたい場合に使える」という類の機能が満載、そのためにシステムの裏側は複雑になりわかりにくくなり、着ぶくれでパンパンな状態に。
案の定、できあがってしばらく経った時、処理が重たくて動かなくなり、改善に何日もかける羽目になり、お客さんに多大な迷惑をかけてしまいました。盛り込んだ多くの機能は実際にはたいして使われることはありませんでした。
立川談志師匠のジョークで電車に乗り損ねたお婆さんの小話があります。
駅員が特急電車を案内すると「早く着いたって時間を持て余して困る」と不服で、「乗ってもいいけど料金は安くするべきだ」と言い出す。理由は「電車にお邪魔する時間がいつもより少なくて済むんでしょう」。
本当に必要なサービスとは何か、をあらためて考えさせられますね。