第1回 アドリブ練習とプログラミング

今のところまだ何でもない彼は何もしていない(筒井康隆『虚人たち』)。こんにちは、大島雅己です。
これからITの仕事をいろいろな視点から見直していきます。

楽器の演奏スキルを上達させることと、仕事のスキルを上達させること。これを比べてみます。

学生時代にジャズのビッグバンドサークルでサックスをやっていた時(今もやってますが)、格好良くアドリブが吹けるようになるために難しいジャズ理論の勉強に取り組んでいました。分厚い理論書と格闘したり、先輩方にレクチャーを受けたりと。

しかし、本を読んだり講義を受けているうちは、フーンと思っているだけで、何だかわかったようなわからないような、学んだという実感がない。で、これは勉強が足りないんだと思って、さらに気合いを入れて本を読み直したりしておりました。

全くド素人な学習方法をしていたということです。受験勉強しか知らないド素人だ。

実はその時も先輩から言われていたのですが「こんな理論書で勉強するより、とりあえず実際に演奏してみたほうが早い。あとで理論にあてはめて、ああ、これがあれだったのか、ここは間違っていたな、と振り返る、これを繰り返すのだ」というやりかたが一番上達するんですよね。

しかし当時はこの考え方がピンと来ずに、「ルールを知らなければ吹きようがないではないか」と思っておりました。ド素人です。ひたすら本を読んでオベンキョーしたがるばかりで、結局たいした理論は身に付きませんでした。いや、いろいろ頭には入っていましたが、実践に結びつくような生きたスキルには至らなかったのです。

この私の考え方はいまだに意識のどこかにしつこくこびりついています。

いまクラシックピアノのレッスンを受けているのですが、ここでも私はハノン教則本などの、いわゆるスケール練習とか指のテクニックを徹底的につけることが上達につながると考えていました。しかし先生は「基礎も大事ですが、やはり実際に曲を弾いて、音楽を創っていくということが大事ですよ」と主張されるのです。全く、先生の言うことが正しい。

私は、曲を練習する場合にも、とにかく譜面の通りに正しく弾けるようになることをまず目標として、それができてから、存分に音楽的な味付けをしようというアプローチを取ってしまうのです。ド素人です。そのようなやり方で、人を魅了するような芸術的な演奏は、まずできない。指使いとか音程などが多少間違ってもいいから、音楽的にどう表現するかを考えながら練習していかなければ、いい演奏などできないのです。あなたは音楽を表現したいんでしょう? 譜面通りに正しく弾くことが目的なのですか?

さて、かたや仕事のスキルの話は、というと…

IT業務の場合、例えばプログラムを書くとなると、設計をして方針が固まったらプログラムコードを書いていくわけですが、設計に多大な時間をかけて内容が十分に固まってからようやくプログラムに落としていくのか。はたまた、ある程度の方向性が見えたら細かいところは置いておいてプログラムを書いてみて、動かしてみて悪いところを直していくのか。

前者の方法は、書き上がったプログラムの品質が上がるとしても、非常に時間がかかる恐れがある。あるいは、設計にミスがあって、結局品質も悪いかもしれず、そうなると品質的にも時間的にもNGで、全くいいことない。

後者の場合は、スピードが上がるかもしれませんが、書いては直し、を繰り返しているうちにプログラムがぐちゃぐちゃになる恐れがあります。そうすると結局、完全に直し終わるまでに多大な時間がかかったりして。どっちもどっちです。

結局のところ、理論と実践のバランスをどう見立てるか、でしょうか。こんな結論でよかったのだろうか。

<今日の本歌>
筒井康隆「虚人たち」

 

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