第1010回 アンダルシアの犬と一撃必殺
「自分が何をやりたいか、何を伝へたいかが分かつていたら、技術は後からついてくる」(岡本太郎)。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅己です。
芸術作品でグッと来るのは、今まで味はつたことのない感覚を与へるものです。つまり、一見一聴しただけでは意味がよくわからないやうなもの、これは何だらうと困惑するやうなものに惹かれるのです。逆に、一目で内容が理解できるもの、意味がすんなり透けてゐるもの、誰にでもわかりさうな存在には滅多に心を奪はれません。
ところが世間では恐らく、前者の方は異端視され受け容れられず、後者は広く支持される傾向にありませう。前者は簡単に理解されるものではないため鑑賞するにも手間暇力量が必要ですが、その経験を通して真の愉楽を得ることができ、しかもその後何度も繰り返し賞翫され、その度に新しい魅力を放つでせう。一方、後者の方は何の苦労もなく入つてきますが、すぐにそのまま何の痕跡も残さぬままどこかへ消え去つてしまひ、同じものは二度と求められないでせう。
考へてみれば世間の商品やサービスもこの構図のどちらかに当て嵌まる気がします。どちらを欲するかは受け手の感覚に依るのでせう。
IT現場でもサービスを提供しやうといふ時にはこのことをよく思ひ返してみるとよいのではないでせうか。広く大勢を相手に一発ブレイクさせたいか、本当に望んでゐる人にじつくり味はつてもらいたいのか。
<今日の一唱>
岡本太郎の言葉