第426回 サンロクトオと日本的経営
さてこのとなりの男のもとよりかくなむ、筒井筒井筒にかけしわがぶろぐ過ぎにけらしな妹見ざるまに、女返し、くらべこしふりわけぶろぐ肩すぎぬ君ならずしてたれかかくべき、などいひいひて、つひに本意のごとくかきにけり。こんにちは、大島雅己です。
プロジェクトには想定外のことが起こります。IT現場では何十人ものメンバーが何カ月も動けばウン千万円とかウン億円という規模のプロジェクトが走るので、想定外の事故を極力なくすようにリスクマネジメントがとても重要ですが、どんなに対策を考えても、想定外のことが起こるでしょう。
プロジェクトの根本を揺るがすような事件が起きてしまった時にどうするか。このまま進んだ場合、納期通りに完成させるためには大量の人を新たに追加するか、機能を大幅に減らさなければならない。今の体制のまま進めれば納期は数か月伸びてしまう。
こういう時にまず最初の判断基準となるのは、プロジェクト開始時の方針です。品質・コスト・納期の優先順位をどうおいたか。もし品質を最優先とした場合、人を追加するか納期を伸ばして目的を達成させるという手がありますが、それもまた危険が伴います。途中から人を大量に投入するとマネジメントの負荷は増大するし現場の混乱もあるでしょう。これを統制しながら目標を達成するのは相当に難しいことで、リスクは格段に高まります。筋の悪い手です。
それよりは全てを白紙に戻す方がまだ浅い傷で済むことだってあります。開発チームの疲弊は大きく、経営インパクトも甚大であり、その判断はあまりにも苦しいでしょうが、最悪の結果よりはましかもしれません。
創作の世界でも、創りかけたものが目的に合わないとわかった時、修復を試みるのか、最初からやり直すかは判断に迷うところでしょう。自分一人の作業ならまだしも、何人もの協力体制の中で進めている作品であれば、リーダーの心境はいかばかりか。それでも芸術を愛するのなら変なものを創るよりは何もしない方を選ぶこともあるでしょう。
<今日の本歌>
伊勢物語第二十三段『筒井筒』