第902回 ABC理論とメトニミー

第902回 ABC理論とメトニミー

秋風にこゑを帆にあけてくる舟は天の門渡る雁にぞありける。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅己です。

ものごとをあるがままの姿として受け入れることは大事だと思ひますが、さらに有意義なのは別のものに見立てることでせう。例へる。もじる。準へる。それによつてイメージが意味付けされ立体化され共鳴されて響くのです。

先日、ギタリスト鬼怒無月さんの新宿ピットイン3デイズ、最終日を鑑賞して参りました。デュオおよびキンテート(五重奏)による、タンゴを中心としたアンサンブルを堪能しました。様々な気づきがありましたが、特に感じ入つたのは、鬼怒さんの「見立て」の姿勢でした。曲調はタンゴであつても様相は時にプログレであり時にヘビーメタルであり時に志ん生の落語にもなるのです。さうして見立てられた状態で曲を聴いてゐると全く違つた印象が感じられ、音楽に新たな肉付けがされるのです。

IT現場でも見立てはきはめて重要なスキルです。一つの事象を自分なりの表現で表すとしたらどうなるか。これはコミュニケーションの基礎技術なのです。

(A面へ)

<今日の本歌>
藤原菅根・古今212

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