第1632回 イテレータと純粋統覚

第三か発泡酒かと悩む秋。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。

モーリツ・モシュコフスキーという人がいて、ピアノの教則本で有名です。いまその曲集を稽古しているのですが、弾いていると「なんのためのこんなことをやらなければならないのか」と叫びたくなるほど難しい。最初に譜面を読んだ時は、思わず笑ってしまうほど歯が立ちません。

最初の小節を弾いては失敗し、また頭から繰り返し、失敗してはやり直し、こんなペースでは一曲終わるまでに何年かかるのかと思うほどのひどさですが、何度も何日も何週間も何カ月も続けているとだんだんと弾けるようになっていきます。

これは、時間をかけるからではなく、何度も繰り返すからでもありません。弾くうちに意識ができあがるからなのだと思います。曲の構成や音の流れやリズムの意味などなど、曲の意味を意識することで体の中に曲がしみつくといいますか、ある意味で憑くような状態になるのでしょう。

意識が育っていなければ、いくら時間をかけようが、何万回繰り返そうが、身につかないはずです。しかして、意識化するには、時間をかけて繰り返さなければならないこともまた事実なのです。

(A面へ)

<今日の一唱>
モシュコフスキー『モシュコフスキー20の小練習曲作品91』

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