第1490回 素拍子とヴィルトゥオーソ
春深しぎゆうぎゆうづめで寝る猫ら。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。
ピアノのレッスンに通うたびに、「自分はピアノをどうしたいのか?」を自問します。師匠からはよく「音大生じゃないのだから、自分なりに楽しく弾くことが何より」と言われますが、しかしよくよく考えてみると、この「自分なりに楽しく弾く」ことが何よりも難しいのではないかという気がしてきます。
音大生であれば難しい曲を正確に演奏することが求められるのでしょうが、これは鍛錬を重ねることで近づけるかもしれません。しかし「自分なりに」「楽しく」弾くためには、修業の苦労をくぐり抜け、その先にある楽しさを体で実感し、それを音に表現できなければならないでしょう。ひたすら練習しているだけでは到達し得ない境地であり、これほど難しいことはないものと思われますが、そこにこそ音楽の醍醐味があるのかもしれません。
そういえばグレン・グールドは「指でピアノを弾くのでなく、心で弾く」と言っていますね。指で弾くのと心で弾くのと、はたしてどちらが簡単なことでしょうか。
<今日の一唱>
グレン・グールドの言葉