第1489回 尺骨滑車切痕とエスケープメント
休むより動けないこのジー・ダブリュー。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。
ピアノのレッスンに通うたびに、いかに自分が今まで「ピアノの仕組み」を知らなかったかを思い知るのです。仕組みとはピアノの構造的な話ではなく、ピアノから音が鳴るための仕組みです。「鍵盤を押せば音が出る」ではまったく不十分です。いや、それどころか誤っています。押し方が悪ければ何の音も出ないのです。
ピアノは弦楽器であり、弦を弾いて音を響かせるものです。鍵盤はその弦を弾くためのものです。ギターのように指で弦を直接弾けないので鍵盤をおろすことで振動を弦に与えます。指は機械的に下に降りる役目しかありません。指が正確に上下に動くように支えるのが手のひらです。
さらに鍵盤の上を左右に移動するのは腕の働きです。それを支えるのは肩の仕事であり、音量をコントロールするは肩と背筋の全体によるものです。
つまりピアノの演奏はほぼ全身が関わるもので、それら全てをコントロールしてはじめて思うような音が鳴るなずなのです。電子ピアノでも演奏の原則は同じです。指と鍵盤の間だけでなんとかしようとしてもダメなのです。
そういえば、ピアノの魔術師リストは「手の先に指があるというより、体から指が生えていると思え」と言っていますね。体と手と指を切り離して考えるのではなく、一体となって共同作業しているということなのでしょう。
<今日の一唱>
フランツ・リストの言葉