第983回 定記述とスプラリミナル知覚
タムレタムレITしてタムレ。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅己です。
ものを考へるには必ず前提があります。
食事の献立を考へる際には、腹が減つてゐる、食材を調達する覚悟がある、料理に割く時間がある、などといつた前提があります。もしこの前提に支障があつた場合、食事の不履行に繋がる可能性があります。たとへば腹が減つてゐない、食材を手にできる環境にない、料理をする時間がない、など。
あるいはまた、これから知人と酒を酌み交はさうといふ時であれば、互いに下戸ではない、酒を飲める場所が近くに存在する、飲酒しても仕事に差支へがない、などといつた前提があるはずです。もし両者が酒嫌ひであつたり、酒を飲んでもよい状況でなかつたり、支払ひ能力に問題があつたりすれば、おそらく目的は達せられないでせう。
かういつた前提は事前に十分確認されることが理想的でありますが、たいていの場合はいちいち確かめられることなく、当然あるものだと盲信されてゐます。いや、それどころか意識すらされてゐないことの方が多いかもしれません。だから、何かを始めやうとする前に、いま自分は何を前提としてゐるのか、そしてその前提は正しく叶つてゐるのかをまず検証することが望ましいのです。
IT現場もこの考へ方は重要です。人の意志や発言の背景にどういふ前提が隠れてゐるかよくよく確認することが必要です。たぶんあのことを言つてゐるのだらうとか言はなくてもわかつてもらへるだらうといふ思ひ込みほど危険なものはありません。
<今日の本歌>
谷啓『愛してタムレ』