第962回 ヒエロファニーと生産可能性辺境線
この確かな時間だけが今のITに与へられた唯一のあかしなのです。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅己です。
時間との付き合い方だけはどうしても気をつけなければいかんと肝に銘じております。ある意味それは金銭よりも慎重に扱わねばなりません。なぜなら時間は金銭と違つて、失つた分は二度と取り戻せないからです。
時間はあらゆる人間あらゆる生物あらゆる存在に対して完全に平等に準備されており、ただこれを使ふ側の事情や都合によつて持ち時間にはバラつきが出ます。また同時に、あらゆる人間あらゆる生物あらゆる存在は、好むと好まざるとに関はらず、内容の如何を問はず、常に一定の歩合で時間を費消していく運命にあり、使はずに貯めておくことも、別の資産に交換することもできないのです。
ただし、時間とは一つの感覚でもありますから、感じ方によつて相対的な奥行きを変へることは可能です。例へば考へるスピードを上げれば同じ時間でより深い考察も可能になるわけで、時間の価値は時によつて濃密にも希薄にもなる。
ITは時間との競ひ合ひとも言へます。業務の効率化、手作業の機械化、計算スピードの加速化、すべては時間を稼ぐためのものです。とすればITの目的の一つは、稼いだ時間で何をするか、に繋がるのでせう。
<今日の本歌>
丸山圭子『どうぞこのまま』