第1679回 跳躍進行とプロタゴニスト

肌寒き秋夜の酒のぬるめなり。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。

ピアノの練習曲は、たいていの場合右手でメロディーを弾き、左手が伴奏する形になっています。メロディは言わば歌であって前面に出る役、一方で左パートは和音で背景を作ったりリズムで拍子を図ったりしますが、伴奏と言うぐらいで陰ながら右手に寄り添って支えるような、盛り上げ役と捉えられがちです。

しかしこの立場を逆に考えると違った味わいが生まれます。左手のハーモニーとリズムが主役であり全体をリードするものとし、右手のメロディーはそれに引っ張られるように効果線を彩る。左手が音楽を主導し、右手がそこに追随する。そのように意識して演奏すると、同じ譜面でも出てくる音楽はきっと違ってくるはずです。

前面に見えるものが主役とは限らない。目立たないものが全体を支配してもいい。聴こえないものが奏でる音を聴く。見えないものが織りなすカラーを見る。それもまた感覚の楽しみです。

(A面へ)

<今日の一唱>
モシュコフスキー 20の小練習曲

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