第1198回 バイノーラルと磁気双極子

ベートーベンをぶっ飛ばせ。チャイコフスキーにも言ってやれ(チャック・ベリー『ロールオーバー・ベートーベン』)。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。

レコード盤で音楽を聴いていた頃、針の上げ下ろしや盤の返しが面倒に思ったり、曲順の入れ替えや繰り返しが難しいのに不都合を感じたり、収納スペースに苦心したり、といった悩みがつきものでした。

カセットテープに録音することでこれらが一気に解消し、それどころか持ち運びまで可能になったために音楽生活の充実度が格段に上がったのでした。やがてCDがメディアのダウンサイジングを実現し、さらに音楽は電子化され、もはや針も盤もなく、曲順は自在に操作でき、収納スペースはゼロになりました。

利便性から見れば究極的理想的状況と言えるのかもしれませんが、果たして音楽生活の充実度も最高潮に達したかと言えば、私は逆につまらないと感じるようになりました。いつでもどこでも好きな音楽をいくらでもいかようにでも楽しめる世界になったのに、全く面白くないのです。

街のレコード屋で買い込んだレコードをいそいそと持って帰る時の高揚感はどこにも見当たらないのです。

(A面へ)https://spiraling.co.jp/blog/

<今日の一唱>
チャック・ベリー『ロールオーバー・ベートーベン』

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