第1193回 ポリペプチド鎖と複素平面
とんとんとんからりと隣組、格子を開ければ顔馴染み、廻して頂戴回覧板(徳山璉『隣組』)。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。
音楽の譜面は平面上に書かれたもので、これをそのまま忠実に再現するだけでは、やはり平面的な音が流れるだけです。この2次元の情報を立体的に再現し、3次元にも4次元にもすることが本当の音楽であり、真の演奏と言えるでしょう。
そのためには一つ一つの音符を単になぞるだけではいけない。それでは機械的な響き連なっているにすぎず、躍動も共鳴もない。どこかに向かってもいず、何も積み重なっておらず、どこにもからまり合っていないのです。音楽は空間に像を生みながら、多重の層を織りなしながら、時間的な流れを生みながら次へ次へと繋がってゆくベクトルであるはずなのです。
しかし目の前の譜面に捕らわれたり楽器の操作に一喜一憂していると、この大事なことをスッポリ忘れてしまうのです。
<今日の一唱>
徳山璉『隣組』