第673回 アゴーギクと和御魂
パン、ようやくと上がりました私が初席一番叟でござります、パパパパン、お次が二番叟、パパパパン、三番叟に四番叟、パパパパン、五番叟にブロガーに旗に天蓋、銅鑼に妙鉢、影灯籠に白張、パパパパン。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅己です。
さて、バッハ『フランス組曲第2番』のピアノ練習は一進一退を繰り返してをります。もう数十回のレベルで稽古をつけてもらつてゐるわけですが、そのたびに発見があるところがすごい。
苦労してゐるのは譜面を追うことよりも、表現方法なのです。6つの楽章ですべて表現方法は違うのです。重々しい弾き方、円を描くやうな弾き方、強く駆け抜ける弾き方、軽く弾むやうな弾き方……これらは譜面にも具体的に奏法が書かれませんが、曲に命を吹き込むために欠かせないものであります。
それは、単なる譜面の再現でなく、演奏を音楽として成り立つために必要なことであり、これがなければ人の心に訴へることもできないでせう。
となるとビジネス現場にも通じる話です。見た目は豪華で整つてゐるのにどうも真実味のない空虚なITシステムやウェブサイトを見ることがありますが、これは作つた人に「かうしたい」といふ情感がなく、魂が入つていない証拠だと思ひます。そんなシステムは人を動かすことはできないでせう。
<今日の本歌>
上方落語『伊勢参宮神乃賑』