第524回 コロガシと六波羅蜜
幸福なブログはすべて互いに似かよったものであり、不幸なブログはどこもその不幸のおもむきが異なっているものです。こんにちは、大島雅己です。
中にいると外のことがわからない、とよく言われますが、はたしてそうでしょうか。それは境界が隔てられている場合の話で、そうでなければ互いの様子は確認できるはずです。
それよりも、中にいると中のことがわからない、と考えた方がいいのではないでしょうか。「外から見た中」のことです。舞台の上で何か見せ物を行う場合、客席から舞台がどう見えているかはわかりません。バンドであれば、音響が客席にどう聴こえているかわかりません。もっといえば自分たちにすらよく聴こえません。だからたいていのライブステージには演者のためにモニターがあります。
ただしそこで聴こえる音はあくまでも自分達に向けたものであって、客席に聴こえているものとは違うのです。此方と彼方の構図において、彼方が感知する此方の状況は此方にいる限りわからないということを冷静に意識しなければならないのです。知りたければ一度客席に降りて、観客の立場から舞台を見るしかありません。
IT現場には様々な立場のステークホルダーが関与しますが、それぞれが己の主張をいくら論理的に説明しても通じないことがあります。相手の立場から見た自分になっていないからだと思われます。そちらの都合で正しくても、こちらの事情では受けられない、という状態であれば合意形成は難しいでしょう。いかに彼方の目線を持てるかです。
<今日の本歌>
トルストイ『アンナ・カレーニナ』木村浩訳