第1350回 コピーキャットと契約の箱
アカシアの雨にうたれてこのまま死んでしまいたい(西田佐知子『アカシアの雨がやむとき』)。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。
ここで歌われているアカシアとは本当のアカシアではなく、針槐(ハリエンジュ)とのこと。ハリエンジュの別名はニセアカシアだというのですが、気になるのはこの「ニセ」と冠された命名事情です。
アカシアの名を騙って姿を偽っていたのならともかく、堂々と生きているのに贋物呼ばわりされるとは気の毒です。しかも、少なくとも日本でアカシアが歌や文芸の題材に使われる場合、ほとんどの場合がこのニセアカシアの方だといいます。つまりこちらの方が馴染みがあってポピュラーだということです。悪意などなく、フェイクを騙っているわけでもなく、たまたま最初に呼ばれた名前にニセと付いていただけなのです。
名前は大事なものだけに、名だけで実を判断すると認識を謝る場合もあるのです。
<今日の一唱>
西田佐知子『アカシアの雨がやむとき』