第1076回 迂回生産とゲシュトップフト
常に動いている奴には全体像が見えてない(映画『アイリッシュマン』)こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。
Walk, Don’t Run、というと「急がば回れ」と訳されますが、日本の諺としては「無理して近道を行くのは危険なので、遠回りでも安全な道を歩くべし」の意味が近いでしょう。
しかしもう一歩踏み込んで考えると、「スピードを出していると周りの景色が見えにくくなる」と捉えることもできます。さらに言えば、「動いていると周りの状況が冷静に見えない」とも。毎日毎日あちこち動きまわっている人は、家のフスマに穴が開いていても気がつかないかもしれませんね。
逆に言うと、全体像を見ようと思うなら一旦自分の動きを止めて、じっくりと周りを見渡さなければならないのでしょう。
もちろん、動き続けることは大事であって、すべてを止めてしまっては何も起こりません。動きながらも止まる、止まりながらも動く、この相反するようなスタイルをどう取るかが重要なのです。
このことは三木清さんが旅についての著述に「動即静、静即動」として既に書かれていますが、ビジネスでも人生でもこの精神が有効だと思われます。
<今日の一唱>
マーティン・スコセッシ『アイリッシュマン』