第1610回 ヴァイロセルと無制約者
蕎麦猪口に入れた冷酒の透き通り。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。
こんな状況下なのでウイルスについて日々いろいろと考えるのですが、そもそもウイルスとは全体何なのか、いまだに実感が持てておりません。
生物としての生態をなしていないのに、他者に寄生して増殖し、宿主の生命を脅かす。それは自らの命を永らえさせるための戦略であるかのようだけれど、意志や意欲を持っているとは思えない。増殖といっても細胞のように分裂するのではなく、ただ自分のコピーを大量に作り出すのである。それは自分の分身なのか鏡像なのか亜種なのか。それを司っているのは何者なのか。
そう考えていくとそもそもすべての物質は原子から成るが、原子核の周りを電子が蠢いているというその仕組みは誰が何のために決めたことなのか、まったくわからなくなるのです。
そういえば筒井康隆氏の『虚航船団』に出てくる雲形定規は25種でひと組でありそれぞれは別々の個体でありながら全員が自分であり、他者の概念がありませんでした。人間社会で「私」を認識するために必要なものは何でしょうか。
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<今日の一唱>
筒井康隆『虚航船団』