第1581回 ダケカンバとジャック豆

プルトップ朝から開ける夏休み。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。

高い樹に登っているとします。登れば登るほど、自分が高い場所に向かっていると実感できるでしょう。地面がだんだん遠くなって、天辺が近づいていくでしょう。やがて最初は見えなかった樹の全貌がわかってくるでしょう。樹が高ければ高いほどその感覚も大きくなるでしょう。

しかし、あまりにも高い樹だとしたらどうでしょう。あまりに高すぎて最早そこに樹があるのかどうかもわからないほどの巨木だとしたら。

そうなるとおそらく感覚は逆転して、登っていくことで樹の存在を少しずつ意識できるようになり、進めば進むほど樹の大きさを感じられるようになり、自分の立ち位置を理解できるようになるのでしょう。そして行けども行けども先が見えないながらもその巨大さが感じられ、畏怖と脅威に恐れ戦くことになるでしょう。未知の世界に踏み出す時の感覚も、そういうものなのではないかと思います。

そういえばアルチューホワの『大きなしらかば』で、樹に登ったアリョーシャ少年はてっぺんまで行った時に「いっそう暑くて、すこし目まいをするのを感じた」といいます。この時の少年の感覚は、疲労か、感動か、眩惑か、興奮か、安堵か、恐怖か。そのいずれでもあったか。

(A面へ)

<今日の一登>
アルチューホワ『大きなしらかば』

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