第1560回 ピロリ菌とバチカン美術館
まくなぎに追はれて追ひて夕間暮れ。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。
まっすぐ順調に進むのではない。かといって同じところを回っているわけではない。巡回しているようでして、同じ道に戻ることはない。一見したところ以前と似たような風景が繰り返されているかに思えるが、たどっている軌跡は新しい道筋であり、新しい次元であり、新しいバージョンである。これすなわち、らせんの軌跡である。それも、めぐるたびにその輪は拡大していくのであり、過去に見た風景は少し色褪せているかもしれない。それは自分の視座があがり、視野が広がっているからなのである。
そういえば筒井康隆氏の小説『朝のガスパール』は小説全体がスパイラル構造を描いていて、話がぐるぐる回りながらだんだんと世界全体が広がっていくような目眩く感動の物語でした。らせんを辿りながら気をつけるべきは、自分が今どこにいるのかを意識することかもしれません。
<今日の一唱>
筒井康隆『朝のガスパール』