第1559回 スクラブルと渡渉点

みるみるとアイスクリーム溶けていく。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。

クロスワード・パズルには黒マスルールというものがあって、一定の法則に従って黒いマス目が配置されています。このおかげで、他の単語と交わらない文字が発生します。クロスワードというぐらいだから単語と単語の間で共通する文字が交差するのがこのパズルの特徴でありながら、その法則に与しない文字が存在するのであります。

共通交差するものを「クロス文字」と呼ぶならば、そうでない孤独な文字は「アウェイ文字」とでも言いましょうか。パズルを解く上では、できるだけクロス文字を詳らかにしていくことが重要だしそれが醍醐味でもあるはずで、そういう意味ではアウェイ文字の存在は悲しさを背負っているようです。見つかっても大勢に貢献できず、文字仲間も作れず、場合によっては別の文字に代替が利く恐れすらある。

とはいえ、全体の統一感や整合性を担保しているのはこのアウェイ文字でもあるのです。これがなければ盤面の交通は保たれないし、単語感の収集もつかなくなるでしょう。こういった働きを担っているものは世の中にたくさんあって、いやむしろほとんどがそちら側なのかもしれず、それらの役目を理解して尊重することが大事なのだと思う日々です。

そういえば竹本健治氏の『涙香迷宮』で、いろは歌の暗号に関する部分とそうでない部分について「DNAにおけるコード領域とジャンク領域のようなもの」と例えています。ジャンクだからといって無意味な部分ではありません。そういう意味でも、世の中に無意味なものなどないと言えるのかもしれません。

(A面へ)

<今日の一唱>
竹本健治『涙香迷宮』

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