第1407回 相ゴスミと転び公妨

透かし見て白湯に浮かんだ猫毛取る。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。

俗に言う「専門用語」には大ざっぱに二種類あって、ひとつは特定の分野で公的に使われるもので、もうひとつは限られた利用者の間で半私的に交わされるものです。前者はテクニカル・タームと言い換えられそうですが、ことばそのものは誰でも知っているし使うこともあるけれど実は専門業界では別の意味を持ったりもっと広い意味になるもの、たとえば法律用語の「悪意」「果実」とか工学用語の「遊び」など、後者はスラングとかジャーゴンとか隠語とでも言うもので、ことば自体が第三者には意味不明なもの、たとえば警察業界の「ウカンムリ」とか医学業界の「マルゲキ」とか音楽業界の「モノホン」などが該当するでしょう。IT用語でよくあるバズワードもこの手の仲間なのでしょうが、他にも「アベンド」とか「デグレ」など怪しいものが山ほどあります。気をつけたいのは日常会話の中にこれらのことばがさらりと流れていないか、自分で無意識に使っていないか、ことばが独り歩きしていないか、意味が取り違えられていないか、利用者全体で意識が統一されているか。

そういえば、専門用語を皮肉的に扱った『マグロマル』というSF小説の傑作がありました。人は謎のことばを振り回すのが好きなのか、振り回されるのが好きなのか。

(A面へ)

<今日の一唱>
筒井康隆『マグロマル』

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