第1405回 ホーソン効果とハンフリーフィールド
さつきまでここにゐた猫の体温。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。
そこにあるはずのものを見ようと思えば通常は目に見えるでしょう。あるはずなのに目に入らないこともありますが、それは見ようとしていないか、見えるわけがないと思い込んでいるからでしょう。
そこにあるはずがないものは通常は目に見えるはずもありませんが、ないのに目に入ることがあります。それは目に見えないけれども見たいと強く念じているかあるいはもしかしたら見えるかもしれないと期待しているからかもしれません。
してみると見えるか見えないかは、存在するかしないかだけによるのではなく、見えると信じたり見たいと願ったり見えるかもと期待したり見たくないと拒絶したり見えるわけがないと思い込んだりすることも作用しているのでしょう。
そういえば京極夏彦氏の衝撃的なデビュー作の中で京極堂こと中禅寺秋彦が「我々は誰一人として真実の世界を見たり、聞いたりすることはできなんだ。脳の選んだ、いわば偏った僅かな情報のみを知覚しているだけなんだ」と説破していますね。目に見えるものは本人にとっては現実であり、それは他者の現実ではないということです。
<今日の一繙>
京極夏彦『姑獲鳥の夏』