第1305回 真善美とバナちゃん節
人生は一行のボオドレエルにも若かない(芥川龍之介『或阿呆の一生』)。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。
1万円札の価値は当然1万円ではなく、1枚あたりの製造コストで言えば25.5円だそうで、7.6センチ×16センチ非木材パルプ紙片に大量生産で定型印刷を施したものの価値としてはそんなところでしょう。
そこにどのぐらいの価値をつけるのかは完全に人間の意志、およびそれが凝り固まった慣習によるものであります。原価にはまったく関係なく、経済の流れがそこに100万円の価値を与えることもあれば100円の価値しか認めないこともある。お札そのものに価値を制御する機能はないのです。
おカネだけにとどまらず、身の回りにあるものは、たいてい自分自身に価値や力を持っておらず、ただそれを扱う人間が騒いだり悩んだり争ったり働くことによって勝手に価値を見出しているだけなのに、あたかもその対象がもともとそれだけの価値を持っているものと勘違いしながらそれに気づいていないことが多いような気がします。芸術も文化も産業も思想も。
<今日の一唱>
芥川龍之介『或阿呆の一生』