第1262回 ネポティズムと標本共分散
今とその時と人間は別に変わりはしないが、何しろ関係が充分でないと(志賀直哉『流行感冒』)。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。
モノはモノとして存在し続ける。モノはいつまでもそのモノであり続ける。昨日のモノも去年のモノもどちらもそのモノであり、十年前のモノも来年のモノもやはりどちらもそのモノである。つまりモノとしては変わらない。では何が変わるのか。
変わるのはモノではなく、モノとモノとの関係である。関係性が変わる。関わり方が変わる。距離感が変わる。結びつきが変わる。組合せが変わる。順番が変わる。印象が変わる。つながりが変わる。連携が変わる。コネクションが変わる。位置が変わる。縁が変わる。主従が変わる。正副が変わる。続柄が変わる。感情が変わる。イメージが変わる。
そういった関係性が世の中を構成する。とすればモノ自体を理解するだけでは世の中は掌握できず、関係を抑えることが肝要である。
<今日の一唱>
志賀直哉『流行感冒』