第1155回 人馬宮とオーバーロード
私は用を前に当て、あとからつうっと先へ行く者でござる(狂言『松楪』)。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。
宅配荷物の段ボール箱に、開封用のミシン目が入っていることがありますが、その下につうっと矢印が並んでいると、一瞬戸惑いを覚えます。矢印の向きに合わせて引っ張れと言っているのか、矢印の先に取っ掛かりがあると示しているのか、どちらの意味か迷うからです。前者であれば矢印のお尻から先に向かって開封することになるし、後者であればその逆になります。
つまり矢印には、大きく見ても、方向を表す働きと、点を指す機能と2つの意味があるのだなあと、段ボールを開けるたびに感じ入るのです。矢印のように究極的に単純なものでさえ多重の意味を持つのですから、およそ世の中にある多くの構造体はどれだけ多くの顔を持つのでしょうか。たとえ本体はシンプルな形状であっても見方によっても考え方によっても無数のメッセージを発信するのです。意図は一つでも意味はいくらでも広がるのかもしれません。
<今日の一唱>
狂言『松楪』