第1086回 ウィンザー効果と最近傍探索
早くいらっしゃい。親方がもうナフキンをかけて、ナイフをもって、舌なめずりして、お客さま方を待っていられます(宮沢賢治『注文の多い料理店』)。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。
先日、世間に蔓延る「お勧め」について書きましたが、文中で、「お勧め」「お薦め」と2通りの書き方が混在しておりました。
厳密に考えてみると、「勧める」は「自分がいい感じたものを他人にも体験させようと促す」という感じで、自分の目線に立ち自分のモノサシで評価したものを他人にシェアする行為です。
一方「薦める」は「相手にとってふさわしいと思われるものを取捨選択して紹介する」のニュアンスで、いったん相手の立場を配慮していますが、取捨選択の最終的な判断基準は推薦者側に委ねられています。
いずれにしても、相手の視線から物事を考える段階までは行っていないのです。更に言えば、これだけオススメが受け入れられるのは、オススメされたい人がたくさんいるから、でありましょう。人に何かを決めてもらいたい。つまり自分で何かを決断するのが難しい。あるいは判断のしかたがわからない。はたまた判断する責任を持ちたくない、といったところでしょうか。
様々な考えや意見をシェアするのも、それを参考にすることも大いに結構ですが、自分で自分のことを判断できなくなってしまったら全く無意味です。
<今日の一唱>
宮沢賢治『注文の多い料理店』