第1065回 オラトリオと江島生島事件

浜の真砂と五右衛門が、歌に残せし盗人の、種は尽きねえ七里ヶ浜(歌舞伎『白浪五人男』)。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。

歌舞伎の語源は「かぶく」だそうで、古語辞典などを見ると「傾く」とあり、つまり普通から外れた状態、異なるものを指すのですね。いつもいつも真面目に型通りのことばかり繰り返すのは、安心であり安定であり安全なのかもしれませんが、そればかりでは息が詰まったり飽きが来たり刺激が欲しくなるもので、そうなると時には普段と違うことをしてみたり、あえてハメを外したり、多少の冒険してみようという気になるのは当然のことでしょう。

しかしそれを実際に行動に移せるかというと難しい。規則もあるし人の目もある、安心安定安全が崩れることになる。それは避けたい。であれば、自分ではできなくても他者に託そう。現実以外の世界で代替してもらおう。こういう思いが、歌舞伎とか芝居の世界につながったのかと考えれば、バーチャル・リアリティの原点は歌舞伎とか芝居にいきつくということでしょう。

安心、安全、安定が常に100パーセント正しいというわけではないのかもしれません。

(A面へ)

<今日の一唱>
歌舞伎『白浪五人男』

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