第1043回 トンイルと価値多元主義
幸福な家族はみな似たやうなものだが、不幸な家族はそれぞれ独自に不幸である(トルストイ『アンナ・カレーニナ』)。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅己です。
統一化とか均一化とか標準化と聞くと、一見よいことのやうに思へるけれど、それは個を殺すことでもあり、自由を統制する動きであり、変化を抑へるけるものであるわけで、扱ひにはよくよく注意しなければなりません。
バンドメンバーの衣裳を統一しやうとすれば各メンバーのファッションセンスをアピールしづらくなるでせう。世界の言語が均一化に向かへば少数派の言葉は衰退してしまひます。仕事のやり方を標準化すればするほど生産性は向上してもイノベーションからは遠ざかりさうです。
多様性を大事にしたいなら、まずはあるがままの状態をよく見て、それをどう活かしてゆくかを考へるべきです。無理に枠を作つてそこに嵌らないものを排除するとか、似たもの同士を集めてそれを主流としたり、勝手な理想を決めてそれを他に強要するやり方を続けてゐても文化は発展しないでせう。
<今日の一唱>
レフ・トルストイ『アンナ・カレーニナ』柴田元幸編訳