第1034回 コーザリティと肌理勾配
飲むから貧乏する、と言ふ人もあるけれど、我輩に言はせると、貧乏するから飲むんだ(島崎藤村『破壊』)。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅己です。
因果関係といふものには時に思はぬ罠があるやうです。歌道に暗いから歌がわからないのか、歌がわからないから歌道に暗いのか。
「相関関係は因果関係を含意しない」といふ言葉がありますが、一見関係あるやうに見えても実は無関係であつたり、因果の因と果が逆であつたりするものです。しかし日常の慣習や思ひ込みやバイアスなどによつてそれらに気がつかず、結局誤つた判断をしてしまふのです。これはよくありません。物事と物事の関係性を考へる時はよほど気をつけて望まなければならないのです。
以前なぜなぜ分析といふのが流行りましたが、一方向的な思考の流れには落とし穴があります。逆方向、あるいは全く別軸からの考察も必要かもしれないからです。
関係性を考へるとは、つまり構造を見抜くことです。AとBといふ構造体がどのやうな位置関係になつてゐるのか、どのやうな共通項を持つてゐるのか、間に別の構造体Cが介在してゐるのではないか、更にそこにDが関はる場合それぞれどのやうに変化するのか、など、立体視360度の観点で捉へなければならないのです。
<今日の一唱>
島崎藤村『破壊』