第1033回 力士養成員とパイルド・ラフト
儀式とは身体の無言の伝承だ。言葉や理屈には頼らない(樂直入『私の履歴書』より)。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅己です。
何かを習得するためには基礎から訓練することが必要であるはづです。歌唱力をつけるのなら最初は発声練習からですし、楽器の修行にはロングトーンや音階練習が欠かせません。スポーツなら何であれ柔軟体操やランニングから入るものでせう。本当に高い頂上を目指したり専門家に師事するとなれば更に厳しい道のりになるかもしれません。掃除洗濯からカバン持ちや使ひ走りなど身の回りの雑事を何年も積み重ねる世界もあります。
かういふものを「理不尽」「無意味」「前時代的」と否定する向きもあるでせうが、理屈や意味を求めるものではないのです。身体の中に土台となる基盤のやうなものを固めるための儀式であり、足場作りであり、聖地です。それなしで上辺をいくら華やかに着飾つても、重みも慈愛もない一時凌ぎの紛ひ物になるだけです。
それはビジネス現場でも同じことです。最初から豪華舞台のスポットライトを浴びやうとするのもよいけれど、そのために奈落の丁稚仕事があることを忘れてはなりません。
<今日の一唱>
樂直入『私の履歴書』