第1028回 マイスナー小体と切石積み
パパラギは、いつもからだをきちんと包むやうに心がけてゐる(『パパラギ』)。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅己です。
人間の体を構造とみなす時、その存在を定義する境界線をどこに置くべきかは難しい問題です。体を包む衣服は構造を規定してゐるやうに見えますが、衣服は既に人体から離れた別の構造だとも捉へられます。その場合は体の表皮こそが構造の外壁となるかもしれません。衣服だつて下着もあればシャツも上着もある。
ネクタイやらアクセサリーだのと考へ出すとその構造はさらに複雑になります。表皮の上にも空気の層があるでせうし、油膜やら何やら分泌物などもあるとするとそこは構造的にどう位置付けるのか。
さらには構造の内容物は何であるかと問ふならば、話はさらに難しくなりさうです。角質、汗管、毛根、真皮、皮下脂肪、筋肉、骨、血管……と、内臓に行きつくまでにもとてつもなく入り組んだ組織があつて、かうなると人体を一つの構造だなどと簡単に言つてはいけない気になつてきます。
一口に構造とかシステムとか言ふ時、あらためてその構成をじつくりと吟味しなければならないと思ひ知ります。
<今日の一唱>
ツイアビ『パパラギ』岡崎照男・訳