第1027回 十三経注疏とアテンション・エコノミー
たとへば星の昼見えず夜は乱れて顕はるゝ、例に爰に仮名書の太平の代の、政(『仮名手本忠臣蔵』)。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅己です。
どんなにうまいと評判の嘉肴でも食べてみなければその味はわからない、これは『礼記』の教へですが、これは「やつてみなければ結果はわからない」といふよりも「自分で体感しなければ本当の価値を知ることはできない」或いは「実体を見ずにわかつたつもりになつてはならない」といふことだと捉へてゐます。
情報洪水の現在であればこそ、却つて、然るべき情報を見逃してゐるやうな気がします。情報自体がフェイクを含めてノイズだらけな上に、それを見分ける力も失はれつつあります。手近なもので簡易に間に合はせやうとする風潮が主流になつてをり、正しい情報に辿り着く確率は薄れるばかりです。
逆に考へると、情報の鮮度、品質、価値を見極める力を愚直に磨き抜くことで時代を読む鑑識眼も鍛へられ、そこで高レベルのスキルを身につけられれば、紛れもない真の情報強者になることができるわけです。猫も杓子もプチ専門家を騙つてしまへる世の中だからこそ本物のプロフェッショナルを目指すべきであると考へます。
<今日の一唱>
竹田出雲・三好松洛・並木千柳『仮名手本忠臣蔵』