第1022回 通奏低音とオープンケーソン

薔薇の樹が/澄んだ樹液を吸ひ上げて/緑のなかから/純粋に/自己をひきだして/完全な/薔薇の花となるやうに/わたしは/わたし自身とならう(デビッド・ハーバート・ロレンス『わたしはわたしになる』)。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅己です。

サックスといふ楽器は息を吹き込めばたいていそれなりの音が出るものですが、当然それだけでは楽器として正しい音にはなりません。口の形、身体の姿勢などの、しかるべき奏法があります。特に重要なのは、息のしかたであり、暖かい息を充分に送り込むことです。

これは簡単なやうでゐて難しいことだと感じてゐます。といふのは、楽器を演奏し始めると音を間違へぬやうにとか音符を追ひかけるのに意識が集中してしまひ、さうなると奏法が疎かになるからです。どんな状況にあらうと、正しい奏法をすることは常に基盤として保たれなければならないのです。

車を運転する時に常に正しい姿勢を保つことが重要であるやうに、正しい姿勢、正しい心構へ、正しい意識といつたものは一瞬たりとも忘れてはならず、常に全体を下支へするベースになつてゐなければいけないといふことです。

ビジネスでもIT現場でも、表に目立つことばかりに気を取られて、それを支へてゐる基盤を正しく保つことを忘れないことが重要です。

(A面へ)

<今日の一唱>
デビッド・ハーバート・ロレンス『わたしはわたしになる』小沢章友・訳

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