第1020回 盟神探湯とトリヴィシャ
犬塚信乃は、侮りがたき見八が、武芸に敵を得たりけり、と思へば勇気弥倍して、刃尖より火出づるまで、寄せては返す、大刀音被声(曲亭馬琴『南総里見八犬伝』)。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅己です。
逆境にぶつかつた時、不幸だ不運だと思ふのは簡単ですが、敢へてさの裏を行つて、しめたものだと捉へるやうに努めてゐます。何事もなく平和裡に自分の望み通り事が進むやうな状況にゐれば人は堕落する一方であり、困難だつたり意にそぐはない状況を乗り越えてこそ成長するはづだからです。だからお稽古事に行く前の緊張感は歓迎すべきものであり、苦手な相手との商談など待つてましたの好機であり、自分より強い敵との対決はまたとない佳局なのです。
結果的にうまく行かず、怒られたり振られたり負かされたりしたつてよいのです。それが糧でありバネであり肥やしになると信じて次に向かふだけのこと。大事なのは、くじけずに何度でも立ち上がる胆力、余計な情報に惑はされない太々しさ、たとへどんなに順境にあつても高ぶらずに上を目指す不満力です。
IT現場のプロジェクトもまさにその通りで、課題にめげず、信念を貫き、驕らない姿勢こそがリーダーの持つべきものです。
<今日の一唱>
曲亭馬琴『南総里見八犬伝』