第1008回 ロス・カプリチョスと五蘊十二処十八界
「欲しがることこそ尤もなれとて、七珍万宝欲しいものを、心のままに打ち出だす、打出の小槌を汝に取らせ」(狂言『大黒連歌』)。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅己です。
いつになつても欲しいものはなくならないものです。断捨離とかミニマリズムと称してモノを減らしたりスリム化することはできても、承認や成長などの心理的欲求や、所属や愛情などの社会的欲求はなくせるものではありませんし、世界平和、社会貢献なども含めた自己実現欲求はどこまでも広がるばかりです。言ひかたを変へると、量の欲求から質の欲求へのシフトしてゐるとでも申せませうか。
いづれにせよ、よいか悪いかはともかく、人の欲は限りがなく、これでおしまひといふ地点はなく、何かが手に入ると次の欲がまた現れるのです。それが人生の目標であつたり糧であつたり肥やしであつたり踏み台であつたり拠り所であつたりモチベーションであつたりするのでせう。それらを、一つひとつ、堅実に着実に粛々と叶へていきたいものです。一度に二つも三つも手に入れやうとせず、目の前の標的を全力で狙ふ姿勢で進むといふことです。
IT現場でも、一つのシステムは一つの目的を持つ、といふ状態が好ましいのですが、どうしても人は一度にあれもこれも実現したいと考へてしまふやうです。
<今日の一唱>
脇狂言『大黒連歌』