第1000回 初天神とココペリ

「いにしへにありきあらずは知らねども千歳のためし君にはじめむ」(素性法師)。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅己です。

古典文学もクラシック音楽も古典落語もスタンダードジャズも、初めてお披露目された時は前代未聞のオリジナル作品であり前衛で新種でアヴァンギャルドで最先端だつたはずです。市場からは理解されず批評家からは煙たがられてゐたかもしれません。

さう考へてゆくとなにも芸術分野に限つたことではなく、ありとあらゆる文化、いや日常を取り巻く生活品や習慣すべてに共通する話です。食パンだつて蒲鉾だつて雷おこしだつて、赤鉛筆だつて方眼紙だつて紙コップだつて、メガホンだつて爪切りだつてアルファベットすらも、初めて世の中に登場した時は恐らくナンジャコレハと誰もが眉を顰めたに違ひない。それが長い年月の間に人口に膾炙しブランドが確立し古典化されたわけです。

つまりポッと出の初顔を舐めてもいけないし、知らないものを怖がることはないし、前例のないものを恐れる必要もないのです。

IT現場でも全く同じことです。ITは何かを変革するものであり、そこには旧態を捨てる痛みが伴ふかもしれませんが、それは生まれ変はるための良質な痛みであるべきです。

(A面へ)

<今日の一唱>
素性法師『古今和歌集』巻七・賀詞353

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