第990回 ヴァジュラパーニと見立て落ち

システムなど邪おもふ時に君いそ/\と来ぬなど捨て得むや。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅己です。

ものの捨てるタイミングは難しい。手に入れるよりも捨てる方が難しいのではないかと思はれるほど。考へてみればものを手に入れるための手段や方法は世の中に溢れてゐるけれど、捨てに関してはそれほどでもないやうです。でも本来ならば始めるのと終わるのは同等に考へるべきではないのか。アルファがあつてオメガがある。ピンがあつてキリがある。始原があつて究極がある。

ですからものを作らうとする時は、同時に、壊し方、捨て方も学ばなければいけないはずです。車を買はうとするならば、乗らなくなつた時のことを考へておく。家を建てやうとするならば、住まなくなつた時のことを考慮する。世間の言葉に便乗すれば、終活といふのでせうか。

命あるものであつても同じことです。家族友人親戚縁者ペット、どんなに大事な相手でも永遠に添ひ遂げることはできないのだから、いつか離れることを想定しなければならない。その時になつて困らないやう、互ひに新たなステージに向かへるやうに配慮しておくことこそ本当の絆です。

IT現場でも当てはまります。システムもデータも組織も人も、役目のスタートがあれば必ず終幕もあります。その時どんなエンディングにするのか、決めておくべきなのは当然のことです。

(A面へ)

<今日の本歌>
岡本かの子『かろきねたみ』

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