第969回 マクスウェル方程式とビザンチン将軍問題
道知らば訪ねるもゆかむ電磁場を幣とたむけて秋は往にけり。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅己です。
電気も磁気も子供のころから慣れ親しんだものだしその仕組みや現象もだいたいわかつてゐるやうな気になつてゐますが、実際にはその素性を科学的論理的に説明できるかと問はれればしどろもどろになつてしまひます。それどころか電気とは何か磁気とは何かを一言で表すことすらできないことに気づいて愕然としてゐます。実体として目には見えず、存在があるやうでない、ないやうである。はやてのやうに現れて、転失気のやうに去つてゆく。
だからといつてその成り行きに身を任せてゐるだけではやはりよろしくなく、電灯が点く仕組みも、鉄が磁石に吸着する原理も、電話で音声が伝わるメカニズムも、自分の言葉で説明したいものです。なんだかよくわからないけれどさうなつてゐるからそれでよいのだとばかり思考停止してゐては、意志を持たず周囲に流されてゐるのと変はりありません。自分の世界を自分の足で踏みしめて生きるためにはその世界を自分の言葉で語れなければならないはずです。
IT現場でも何かを語つたり考へたり作つたり決めたりする時、どれぐらい自分の言語を働かせてゐるか、意識しなければならないでせう。ともすれば借り物の言葉だけで全て賄つてしまへる恐れがあります。
<今日の本歌>
凡河内躬恒『古今和歌集』秋歌下313