第802回 ウエイと観察者バイアス

我々の存在は噂にすぎない。まるでデジャヴのやうに。そしてブログにも残らない。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅己です。

ものづくりにとつて、主役はもの自体であり、またそれを使う人であります。作る人は主役ではなく、云はば裏方です。音楽にとつて主役は楽曲そのものであり、またそれを享受する受け手であります。演者は主役でなく、やはり脇役です。文芸作品の主役は作品本体であり、またそれを味はう鑑賞者であります。創作者はホストではなく、スタッフです。

だからアーティストといふのは世間の脚光を浴びて喝采を浴びるヒーローのやうなものではなく、作品をアピールし引き立てて観客に届ける黒子のやうな存在なのでせう。

もちろんその作品が受け入れられて高い評価を得ることで結果として作者への礼賛も集まるのは自然なことですが、それは本質的なことではないし、作り手が最初からさういうことを狙ふとしたら本末転倒な気がします。先日、椎名林檎さんがラジオのインタビューでこれに近いことを仰つてゐるのを聴いて、畏れ多くも我が意を得たりと感動しました。

ものを創作する人は、作つてゐる自分のことを案じたり気にしたりするのではなく、できあがるべき作品そのもののことを、そして何よりもそれを受け取るカスタマーのことを最強に意識しなければならないのです。考へてみれば当たり前のことであるはずですが、往々にして忘れられてしまふやうに感じます。

ビジネス現場にも当て嵌まる話です。ITに限らずあらゆる仕事は何らかのサービスを人に與へるものでせうから、何を第一に考へるべきかは云はずもがなであります。

(A面へ)

<今日の本歌>
F・ゲイリー・グレイ『メン・イン・ブラック:インターナショナル』

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