第1341回 アデノイドとアダムの林檎
己がじし喉ぼとけ見せ寒の水(安東次男)。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。
喉元過ぎれば熱さを忘れるとは、いくつかの意味にとることができる言葉です。文字通りにとれば「苦しいことや辛い目にあっても終わってしまえばすっかり忘れてしまって、教訓が身につかない」「せっかく受けた恩義も時が経てば忘れてしまう」のようなことなのでしょうが、逆にとれば「苦しいことも少し我慢すればすぐに癒えるのだから諦めてはいけない」、つまり「最初の関門をクリアするまでがんばれ」という励ましだとも考えられるのです。
もう一歩踏み込めばこうも言えます。容器いっぱいの食べ物は、最初のうちはなかなか減らないけれど、時が経つほどその減り具合は加速していく、つまり物事は最初の付き合い方がすべてを決めるものである、と。さらには、工程の四分の一ほどまで気をつけて進めれば、あとは軌道に乗って順調に進むから安心だ、ともとれるのです。
<今日の一唱>
安東次男『花筧』