第1123回 インペトゥス理論と逐次加速緩和法
大声は俚耳に入らず(『荘子』天地篇)。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。
ここ一番の大事な場面になると、力が入るのものです。楽曲の演奏で最も盛り上げたい所。舞台の芝居で一番の見せ場。ミステリー小説の謎解きシーン。大ネタ落語のサゲ科白。プレゼンテーションの結論パート。フルマラソンのラストスパート。いずれも、あらん限りの力を存分に込めたいところ、と言いたいところですが、こういう時こそ、逆に力を抜くことが大事なのだと考えます。
力が入ると体は硬直して、血流も神経も流れが止まり、動きは自由を失い、思考は停止し、全く逆効果となってしまいます。演奏は伸びやかさを失って音量は響かず、演技はぎくしゃくし声は通らず、謎解きのトリックも頭に入らず、科白回しはうまくいかず、プレゼンテーションは空回り、マラソンは息が切れるでしょう。
盛り上げるべきタイミングこそ、力を抜くことで、言葉も動きも、伸びやかとなり、自由を得て、朗々と響き渡るはずです。
<今日の一唱>
『荘子』天地篇