第1061回 知魚楽とミルグラム実験

心あらむ人にみせばや津の国の難波わたりの春の景色を(能因法師)。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。

自分の思ひや感動を、同じ志を持つ人達にも伝えたい。情緒を解する人、自分の感性を理解してくれる相手に、同じ喜びや情感を共感したい。かういふ願ひは大事だと思ひますが、トラブルに繋がる要因を秘めてゐるかもしれません。なぜならば、最初からわかつてくれる人だけを相手にしてをり、それ以外の人達をシャットアウトしてゐることになるからです。

しかし本当に重要なのは、考へ方の異なる相手と議論をして、互ひの料簡を知つた上で解決を探つてゆくことです。つまり、自分とは感性の違ふ人に対してこちらの思ひを理解してもらひ、また相手の意見に真摯に耳を傾けて、受け入れられないことは反論し、納得できるものは尊重し、さうやつて全体としてしかるべき方向に進んでゆくことであるはづです。

さらに言へば、最初から完全に理解し合へる相手などほぼ存在しないのではないでせうか。だからまづやるべきことは自分の中にある意見や考へをどうやつて周りに伝へるかを考へることだと思ふのです。

(A面へ)

<今日の一唱>
能因法師『後拾遺和歌集』43

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