第1057回 アーカーシャと酸化還元反応

ふけにけり音せぬ月に水さび江の棚無し小舟ひとり流れて(心敬)。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。

水垢と聞くと不潔なイメージが際立つて嫌悪感を招くけれど、「みさび」と来ると寂寞感や枯淡美を喚起させます。これは「さび」といふ語感の魅力だらうか等と思つていろいろと調べてゐたら、さび(錆)の語源は「寂しい」のサビに通じるらしいと知り、感慨深いなあと膝を叩いたのでした。当然、ワビサビのサビにも繋がり、さらに辿れば「さびれる」「すさぶ」「すさむ」にも、「寒い」にも関連するでせう。

孤独とか閑寂とか空虚といふものは、人から嫌われさうなものでありながら、一方で、神聖さや荘厳さや幽玄さを感じさせるものでもあり、憧憬や崇拝や尊敬の対象になるといふことなのでせうか。賑やかなもの、派手なもの、楽し気なものに人が集まると思ひ込んでいたら間違ひで、実は、静かなもの、地味なもの、寂し気なものの方が、人々も感動や共感や称讃を呼び起こすのかもしれません。芸術でも、芸能でも、スポーツでも、勝負事でも、そして、ビジネスにおいてもです。

(A面へ)

<今日の一唱>
心敬『芝草句内岩橋』下

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