第1566回 クオンタムと職務専念義務
しやわしやわといふ蝉のこゑ朝を告げ。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。
マルチタスクとはコンピュータ用語から来ているようですが、実際には複数の仕事を同時並行でこなしているわけではなく、細かく刻まれた作業をものすごいスピードで切り替えながら進めているので、瞬間瞬間をみてみればひとつの仕事しかしていないのです。
さて人間の行動はマルチタスクが可能なのでしょうか。テレビを見ながら勉強したり食事をしながら本を読む行為は「ながら族」などと言って揶揄されたものですが、もし本当に一度に二つも三つもタスクをこなすことができれば大いなる生産性向上が実現できるはずです。
しかし神経の集中先が複数になればどうしても注意力はおろそかになるはずで、たとえば何かを食べながらテレビを見ているとしても、画面に無中になっている瞬間は食物の味がわからなくなっているでしょうし、味が気になった瞬間はテレビの視点はぼやけているはずです。
とすれば、意識の集中点を瞬速で自在に切り替えられるような修業を積めば人間もマルチタスクが実現できるのかもしれません。
そういえばいしいひさいち氏の漫画に出てくるみのる君は勉強をしながらヘッドホンで音楽を聴くと同時にテレビの野球中継を見つつ食事をするというマルチタスクを実現していました。これがすべて集中的に行われていたとすると恐るべき能力です。
<今日の一唱>
いしいひさいち『ドーナツブックス』